日本は人形の宝庫といわれるが、それはまた京都を中心として展開してきたともいえる。
平安時代、貴族の子らの間で、「ひいな人形」を使ってのままごと遊びのようなものが流行した。これが京人形の始まりともいえるだろう。
江戸時代になると、すべてが江戸中心、将軍中心に変わってゆくが、人形は、変わらず京都を中心に展開してゆく。初期には、人形職人も数多く出るようになり、節句前になると、これらの人形師たちの店先には、さまざまな人形が並べられた。
江戸時代末期になると、御所人形が生まれるが、これは当時の宮廷から諸大名への贈答用としても重宝された。当時の京人形師としては、面吉、面卯などが有名で、彼らによって今日に続く京人形の典型が完成されたといわれる。
京人形は、頭、髪付、手足、小道具、着付など、その製作工程が細かく分業化されており、それぞれが熟練した職人たちの手仕事によって行われている。この高度に専門化した製作システムが、人形に京都だけの特色をもたせ、個性をもたせている。そして、京人形が年月を経てからも、趣を醸し出すことができるのは、この専門家がもたらす技術の錬磨と妥協を許さない厳しい製作姿勢によるところが大きい。
現在、京人形と呼ばれるものには、雛人形をはじめ、五月人形、浮世人形、風俗人形、御所人形、市松人形などがある。とりわけ節句人形は、常に生産が需要に追いつかないという状態で、京人形に対する強い人気を物語っている。しかし、それに止まることなく、伝統工芸展などにも積極的に出品、工芸品としての価値を高め、維持すべく努力を続けている。
制作工程
Production process
◎雛人形製作プロセス
頭部制作
1
髪付制作
2
手足制作
3
着付
4
完成
5